天下取り採点 戦国武将205人
戦国武将たちの通信簿 |
主要な武将は「先見力」「情報力」「企画力」「人望」「経済力」「政治力」「作戦力」「戦力」の8項目、その他の武将はこのうち「企画力」「経済力」「作戦力」を除いた5項目について、それぞれ5点満点で採点されている。人物事典といっても、信長・秀吉クラスでも2ページしか割かれていないため、個々の武将を深く知ることは難しいだろう。以下、項目について若干の説明を加える。
「先見力」とは字の通り。本書のねらいである“天下を取れたのは誰か”という点から見れば、家康を「5」としたいところだが「4」。待ちの姿勢に徹した生き様は、確かに消去的と言えなくもない。明智光秀の謀反を見抜けなかった信長は「5」。南蛮貿易や自由都市・堺の発展に努めたことが評価されたようだ。秀吉は朝鮮出兵の失態により「3」。「晩年は英雄でなくなった」とまで書かれれば仕方がない。
「人望」とは、家臣の離反が少ない、などの武将としての魅力のこと。光秀はじめ、荒木村重らに見限られた信長の評価も本書では厳しくなる。なんと、「2」である。そのカリスマ性が、後世の信長人気を支えていると言うべきか。
「戦力」といっても、本書では戦場に動員できた兵数を指す。そのため、必ずしも武将個人の戦闘力が反映されているわけではない。たとえば、「日本一の兵」と賞賛された真田幸村は5点満点で「2」にとどまっているし、前田慶次にいたっては、その超人的な戦闘力は認めつつも、やはり「2」である。どれだけ戦上手だったかを知るには、「戦力」よりも「作戦力」の欄を参照されたし。
ちなみに、これら8項目の総合点でトップに立ったのは、前田利家である。政治力の「4」以外は全て「5」。典型的な世渡り上手が、最も天下人に近かったというのも面白い。以下、38点(北条氏康・武田信玄・徳川家康)、37点(北条早雲・黒田如水)、36点(豊臣秀吉)、35点(伊達政宗・毛利元就)、34点(上杉謙信・直江兼続・斎藤道三・織田信長・長曽我部元親)、33点(真田昌幸・竹中半兵衛・細川幽斎・加藤清正・島津義弘)、32点(秋田実季)、30点(津軽為信・浅井長政・蒲生氏郷・尼子経久・福島正則)とつづく。
それぞれの武将の評価は妥当だが、やや通俗的な面も。新しい見方をしたい読者には退屈かも知れないが、一通りの基礎知識を得たいのであれば本書は最適と言える。